逸失利益・中間利息控除の問題点(応用知識)
1 利率を何%とすべきか
原則として、年3%とされています。
但し、令和2年3月31日までに発生した交通事故については、原則として、年5%とされています。
なお、交通事故被害者にとっては、年3%の方が、有利になります。
バブル経済崩壊後、低金利の状況が長期間続いているため、法改正により、令和2年4月1日以降の交通事故については、原則として、年3%とされています。
2 単利とすべきか、複利とすべきか(単利計算である新ホフマン係数を用いるべきか、複利計算であるライプニッツ係数を用いるべきか)
(1)単利と複利の違い
この点、まず、単利と複利の違いから説明いたします。
例えば、現在100万円があるとして、利息が年3%の単利による計算では、2年後には、6万円(100万円×0.03×2年)の利息がつくことになります。
これに対しては、例えば、利息が年3%の複利(1年毎)による計算では、1年後に、3万円(100万円×0.03×1年)の利息がつき、さらに、その1年後は、3万0900円((100万円+3万円)×0.03×1年)の利息がつきますので、結局、2年後には、6万0900円(3万円+3万0900円)の利息がつくことになります。
(2)裁判実務の運用
この点、最高裁判例は、いずれの計算方法も否定していませんでしたので、従前、各地方裁判所によって運用が異なっていました。
しかし、東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁は、各地裁で運用が異なると、地域間格差が生じ被害者相互間の公平に反することから、平成11年11月22日、「交通事故による逸失利益の算定方法についての共同提言」を発表し、原則として、ライプニッツ係数(複利計算)を採用するのが妥当と考える旨の提言をしました。
よって、その後の交通事故における裁判実務では、原則として、ライプニッツ係数(複利計算)が採用されています。
交通事故被害者にとっては、複利計算で中間利息控除された損害を受け取ることになりますので、不利な状況であるといえます。
3 参照条文
〇民法404条(法定利率)
「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。」
〇民法417条の2(中間利息の控除)
「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。」
〇民法722条1項
「第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。」