過失割合(高速道路上の交通事故の場合)
1 はじめに~交通事故の死亡事案
当法律(弁護士)事務所は、交通事故の死亡事案の損害賠償請求事件を、専門的に取り扱っております。
そして、交通事故の死亡事案の損害賠償請求事件において、損害額に大きく関わる問題として、「過失相殺」の問題があります。
2 過失相殺
過失相殺(かしつそうさい)は、被害者にも過失(落ち度)があった場合、被害者に生じた損害全額を加害者に負担させるのは、公平の観点から妥当ではないので、その過失割合に応じて、加害者に負担させる損害額を減額すべきであるとの考えに基づくものです。
過失相殺全般については、「過失相殺」をご覧ください。
3 東京地裁民事交通訴訟研究会が作成した、過失割合の認定基準(1)
(1)東京地裁民事交通訴訟研究会が作成した、過失割合の認定基準
そして、裁判所は、大量の交通事故による損害賠償請求事件を、適正かつ迅速に処理する必要があることから、過失相殺についても、交通事故の状況を詳細に類型化して、過失割合の認定基準を提言しています。
これは、具体的には、東京地裁民事交通訴訟研究会が作成した、過失割合の認定基準(「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(全訂4版)(別冊判例タイムズ第16号))になります。
(2)注意点
但し、本件では、東京地裁民事交通訴訟研究会が作成した、過失割合の認定基準について、平成16年に提言された基準(別冊判例タイムズ第16号)を記載しています。
現在は、平成26年に提言された基準(別冊判例タイムズ第38号)が適用され、上記基準とは少し異なるところがありますので、ご注意ください。
(3)交通事故の状況の類型化
そして、上記の過失割合の認定基準(平成16年に提言された基準)は、「高速道路上の交通事故」を、次のように類型化しています。
- (1)合流地点における交通事故
- (2)進路変更に伴う交通事故
- (3)追突交通事故
- (4)落下物による交通事故
- (5)歩行者と自動車との交通事故
(4)過失割合
ア 基本の過失割合
そして、上記の過失割合の認定基準(平成16年に提言された基準)は、次の4のように、過失割合を認定しています。
イ 修正要素
但し、次の4の過失割合は、基本の過失割合になります。
修正要素もあり、例えば、運転者に著しい過失がある場合、交通事故の状況によって、その運転者に不利に修正されます。
そして、最終的な過失割合は、様々な修正要素によって修正されて、認定されることになりますので、ご注意ください。
4 東京地裁民事交通訴訟研究会が作成した、過失割合の認定基準(2)
(1)合流地点における交通事故
過失割合(本線車:合流車) | ||
四輪車同士の交通事故 | 30:70 | |
自動二輪車と四輪車との交通事故 | ||
自動二輪車が本車線を走行する場合 | 20:80 | |
自動二輪車が加速車線を走行する場合 | 40:60 |
(2)進路変更に伴う交通事故
四輪車同士の交通事故 | 過失割合(後続直進車:進路変更車) | ||
走行車線から追越車線へ進路変更する場合 | 20:80 | ||
その他の場合 | 30:70 | ||
自動二輪車と四輪車との交通事故 | |||
走行車線から追越車線へ進路変更する場合 | |||
四輪車進路変更 | 10:90 | ||
自動二輪車進路変更 | 30:70 | ||
その他の場合 | |||
四輪車進路変更 | 20:80 | ||
自動二輪車進路変更 | 40:60 |
(3)追突交通事故
本線車道等に駐停車中の自動車に対する追突交通事故 | 過失割合(追突車:被追突車) | ||
四輪車同士の交通事故 | 60:40 | ||
自動二輪車と四輪車との交通事故 | |||
四輪車駐停車 | 50:50 | ||
自動二輪車駐停車 | 70:30 | ||
路肩等に駐停車中の自動車に対する追突交通事故 | 100:0 | ||
追突交通事故(被追突車に法24条違反がある場合) | |||
四輪車同士の交通事故 | 50:50 | ||
自動二輪車と四輪車との交通事故 | |||
四輪車に法24条違反がある場合 | 40:60 | ||
自動二輪車に法24条違反がある場合 | 60:40 |
なお、法24条違反とは、危険を防止するためやむを得ない場合ではないにもかかわらず、車両を急に停止させ、又は急ブレーキをかけることです。
(4)落下物による交通事故
後続車:先行車=40:60
(5)歩行者と自動車との交通事故
過失割合(歩行者) | |
本線車道を歩行中の歩行者の交通事故 | 80 |
駐停車車両の近傍の歩行者の交通事故 | 40 |