交通事故の死亡事案の民事裁判、刑事裁判の解説(被害者側)
本記事では、交通事故の死亡事案の民事裁判、刑事裁判について、被害者遺族側の観点から、以下のこと等を、解説します。
民事裁判について
刑事裁判について
1 交通事故の死亡事案の民事裁判について
(1)交通事故の死亡事案の示談交渉や民事裁判を、弁護士に依頼するメリット
ア 交通事故事案の示談交渉や民事裁判を、弁護士に依頼するメリット
交通事故の被害者は、加害者側に対して、損害賠償請求をすることができます。
他方、自動車の所有者は、交通事故を起こして損害賠償義務を負うリスクに備えて、自動車保険の任意保険(対人賠償保険など)に加入しているのが通常です。
そこで、被害者には、加害者側の任意保険会社が、損害賠償金(保険金)を支払うのが通常です。
しかし、保険会社は、営利企業であるため、極力、支払いを少なくしようとする傾向があります。
任意保険会社の示談提示額(任意保険の支払基準)は、正当な基準(裁判・弁護士基準)と比較して、極めて低額であるのが一般的です。
被害者は、弁護士に依頼すれば、正当な基準(裁判・弁護士基準)の金額を基本的に獲得できます。
よって、ここに、交通事故事案の示談交渉や民事裁判を、被害者が弁護士に依頼するメリットがあります。
イ 交通事故の死亡事案の示談交渉や民事裁判を、弁護士に依頼するメリット
そして、例えば、正当な基準(裁判・弁護士基準)だと、10万円の損害であるところ、任意保険会社の示談提示額が6万円だった場合、弁護士に依頼するメリットは、それほど大きくありません。
他方、例えば、正当な基準(裁判・弁護士基準)だと、1億円の損害であるところ、任意保険会社の示談提示額が6000万円だった場合、弁護士に依頼するメリットは、極めて大きいと言えます。
そして、死亡事案のように、損害額が高額になる事案は、後者に近く、数千万円も差が出ることは頻繁に起こります。
よって、交通事故の死亡事案の示談交渉や民事裁判を、被害者遺族が弁護士に依頼するメリットは、極めて大きいと言えます。
ウ 当事務所(交通死亡事故・専門弁護士事務所)へのご相談・ご依頼のお勧め
但し、通常、弁護士は、交通事故の死亡事案を、一生に一度、取り扱うかどうかという感じだと思います。
よって、交通事故の死亡事案の示談交渉や民事裁判を、弁護士に依頼したからといって、必ずしも適切な金額を獲得できるとは限りません。
当事務所の経験でも、他の弁護士から示談を勧められていたが、疑問に思われて、当事務所にご依頼いただき、結局、他の弁護士から勧められていた金額から、約3000万円も増額して解決したことがあります。
このように、交通事故の死亡事案は、弁護士によって獲得できる金額に大きく(数百万円以上も)差が出ることがあります。
よって、交通事故の死亡事案の示談交渉や民事裁判を、弁護士に依頼する場合、交通事故の死亡事案を専門的に取り扱う当事務所に、ご依頼されることをお勧めいたします。
まずは、当事務所の無料弁護士相談(面談相談、電話相談など)を、ご利用されることをお勧めいたします。
(2)交通事故の死亡事案の民事裁判で獲得できる金額の相場等
当ホームページには、「交通事故の死亡賠償金(保険金)の相場等の解説」のページがあります。
そして、「民事裁判で獲得できる金額の相場等」は、「賠償金(保険金)の相場等」とほとんど同じです。
よって、交通事故の死亡事案の民事裁判で獲得できる金額の相場等につきましては、このページをご覧ください。
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(3)交通事故の死亡事案の民事裁判で獲得できる金額の相場の目安を知りたい方(結論を知りたい方)へ
交通事故の死亡事案の民事裁判で獲得できる金額の相場の目安を知りたい方(結論を知りたい方)は、以下をご覧ください。
この点、相場は、裁判・弁護士基準の金額になります。
裁判・弁護士基準は、裁判所が基本的に認めている基準になります。
被害者遺族は、弁護士に依頼すれば、裁判・弁護士基準の金額を基本的に獲得できます。
当事務所(交通死亡事故・専門弁護士事務所)へのご相談・ご依頼をお勧めいたします。
ア 損害項目
交通事故の死亡事案の民事裁判で獲得できる金額(損害賠償金、保険金)の相場(裁判・弁護士基準)における損害項目は、以下のようになります。
死亡による損害 | 死亡による逸失利益 死亡慰謝料 葬儀関係費用 |
---|---|
傷害(死亡に至るまでの傷害)による損害 | 治療関係費 入院雑費 入院付添費 付添人の通院交通費 休業損害 傷害慰謝料 |
その他の損害 | 損害賠償請求関係費用 弁護士費用 遅延損害金 物的損害(物損) |
イ 高額となる損害項目
(ア)死亡による逸失利益
最も高額な損害となることが多いのは、死亡による逸失利益になります。
裁判・弁護士基準で、例えば、22歳の男子大学生の場合、7800万円程度になります。
(イ)死亡慰謝料
次に高額な損害となることが多いのは、死亡慰謝料になります。 裁判・弁護士基準で、2000万円~2800万円程度になります。
(ウ)弁護士費用、遅延損害金
その次に高額な損害となることが多いのは、弁護士費用と遅延損害金になります。 裁判・弁護士基準で、それぞれ数百万円程度になることが多いです。
(エ)葬儀関係費用
その次に高額な損害となることが多いのは、葬儀関係費用になります。
裁判・弁護士基準で、150万円(但し、実際に支出した額が、これを下回る場合、実際に支出した額)になります。
ウ 死亡による逸失利益の相場(裁判・弁護士基準)の目安
死亡による逸失利益の相場(裁判・弁護士基準)の目安は、以下のようになります。
但し、あくまで目安ですので、ご注意ください。
5歳の女子幼稚園児の場合 | 4700万円程度 |
---|---|
17歳の男子高校生の場合 | 6800万円程度 |
22歳の男子大学生の場合 | 7800万円程度 |
45歳の男性の会社員(年収600万円)で、妻子ありの場合 | 6700万円程度 |
45歳の主婦の場合 | 4400万円程度 |
70歳の主婦の場合 | 1700万円程度 |
エ 死亡による逸失利益(年金収入)の相場(裁判・弁護士基準)の目安
死亡による逸失利益(年金収入)の相場(裁判・弁護士基準)の目安は、以下のようになります。
但し、あくまで目安ですので、ご注意ください。
70歳の女性の年金受給者(年金収入(年収)120万円)の場合 | 700万円程度 |
---|---|
80歳の男性の年金受給者(年金収入(年収)120万円)の場合 | 400万円程度 |
オ 死亡慰謝料の相場(裁判・弁護士基準)の目安
死亡慰謝料の相場(裁判・弁護士基準)の目安は、以下のようになります。
但し、あくまで目安ですので、ご注意ください。
一家の支柱 | 2800万円 |
---|---|
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他 | 2000万円~2500万円 |
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(4)交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリット
ア 交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリット~示談交渉より高額な金額を獲得可能な点
民事裁判をする場合は、一般的に、加害者側の任意保険会社と示談交渉したが、示談交渉が決裂した場合に、民事裁判をするイメージをお持ちの方が多いと思います。
もちろん、交通事故の死亡事案でも、このような流れになることがあります。
しかし、交通事故の死亡事案で民事裁判をする大きなメリットとしては、示談交渉より高額な金額を獲得可能な点があります。
それ故、示談交渉をせずに、民事裁判をする場合もあります。
以下、説明いたします。
イ 交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリット~弁護士費用を獲得できる点
(ア)
民事裁判をするメリットとしては、損害としての弁護士費用を獲得できる点があります。
損害としての弁護士費用は、相場(裁判・弁護士基準)では、全損害額の10%程度が認められています。
例えば、全損害額(死亡による逸失利益や死亡慰謝料等の損害の合計額)が7000万円の場合、弁護士費用は、
7000万円×0.1程度=700万円程度
にもなります。
(イ)
ただ、示談交渉では、加害者側の任意保険会社は、弁護士費用を支払うことはない状況です。
示談交渉では、加害者側の任意保険会社が、「弁護士費用は支払いません。それが不満であれば、民事裁判をしてもらってかまいません。」と主張することは可能です。
そうしますと、被害者遺族が、弁護士費用を求めたい場合、民事裁判をせざるを得ないところがあります。
よって、民事裁判をした場合、弁護士費用を獲得できる状況です。
(ウ)
民事裁判をした場合、被害者遺族は、弁護士費用について、全損害額の10%程度を、加害者側(任意保険会社)に負担させることが可能です。
これにより、当事務所の弁護士費用を全て、加害者側(任意保険会社)に負担させることが可能です。
つまり、当事務所の弁護士費用(着手金、報酬金)について、ご依頼者(被害者遺族)の負担額は、実質0円になることが可能です。
ウ 交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリット~遅延損害金を獲得できる点
(ア)
民事裁判をするメリットとしては、損害としての遅延損害金を獲得できる点があります。
遅延損害金は、法律上、利率は、原則として、年3%が認められています。
但し、令和2年3月31日までに発生した交通事故については、年5%が認められています。
なお、被害者にとっては、年5%の方が、有利になります。
また、遅延損害金の起算日は、判例上、交通事故日から認められています。
(イ)
例えば、被害者の損害の合計額が7000万円で、交通事故日から2年後に解決した場合、遅延損害金は、
7000万円×0.03×2年=420万円
にもなります。
(ウ)
ただ、示談交渉では、加害者側の任意保険会社は、遅延損害金を支払うことはない状況です。
示談交渉では、加害者側の任意保険会社が、「遅延損害金は支払いません。それが不満であれば、民事裁判をしてもらってかまいません。」と主張することは可能です。
そうしますと、被害者遺族が、遅延損害金を求めたい場合、民事裁判をせざるを得ないところがあります。
よって、民事裁判をした場合、遅延損害金を獲得できる状況です。
エ 交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリット~その他
(ア)
交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリットとしては、その他には、例えば、死亡による逸失利益や死亡慰謝料や過失割合について、事案によっては、示談交渉をするより民事裁判をする方が有利な場合があります。
(イ)
また、示談交渉は、互譲(お互いが譲歩)することによって解決する面がありますが、例えば、被害者遺族の被害感情が非常に強い場合、互譲による示談での解決より、民事裁判における判決での解決の方が適している場合があります。
オ 交通事故の死亡事案で民事裁判をするメリット~まとめ
以上のように、例えば、全損害額が7000万円の場合、弁護士費用は、700万円程度にもなります。
また、交通事故日から2年後に解決した場合、遅延損害金は、420万円にもなります。
これらの合計額は、1120万円にもなります。
そして、示談交渉では、これらの金額は支払われることがない状況であるのに対して、民事裁判をした場合は、獲得できる状況です。
よって、交通事故の死亡事案で民事裁判をする大きなメリットとしては、弁護士費用と遅延損害金を獲得でき、示談交渉より高額な金額を獲得可能な点があります。
(5)交通事故の死亡事案で民事裁判をするデメリット
ア 交通事故の死亡事案で民事裁判をするデメリット~解決までに時間がかかる点
(ア)
他方、交通事故の死亡事案で民事裁判をするデメリットとしては、解決までに時間がかかる点があります。
示談交渉の場合(被害者遺族が、加害者側の任意保険会社から示談額の提示を受けて、弁護士に相談して、増額見込みの回答を受けて、弁護士に依頼した場合)、大きな争いがなければ、交渉開始の準備に1か月程度、交渉を開始してから、3か月程度で解決することがあります。
民事裁判の場合、訴訟提起の準備に2か月程度、訴訟提起後、大きな争いがなければ、6か月~1年程度で解決することがあります。
(イ)
この点、大きな争いがない場合とは、例えば、死亡慰謝料で、被害者側の主張が2800万円、加害者側(任意保険会社)の主張が2500万円であるような場合や、過失割合で、被害者側の主張が加害者:被害者=90:10、加害者側(任意保険会社)の主張が80:20であるような場合です。
他方、大きな争いがある場合とは、例えば、加害自動車の運転者が、交差点を青信号で進行したか、赤信号で進行したかで争いがあるような場合で、過失割合が大きく違ってくるような場合です。
大きな争いがある場合は、そもそも示談交渉で解決するのは困難で、民事裁判で解決せざるを得ず、また、高等裁判所まで争うことが多く、解決までに時間がかかるのは仕方がないところがあります。
イ 交通事故の死亡事案で民事裁判をするデメリット~その他
(ア)
交通事故の死亡事案で民事裁判をするデメリットとしては、その他には、例えば、死亡による逸失利益や死亡慰謝料や過失割合について、事案によっては、民事裁判をするより示談交渉をする方が有利な場合があります。
(イ)
また、民事裁判をする場合、訴訟提起の際に提出する訴状に、収入印紙を貼る必要があり、その収入印紙代は、例えば、訴額が5000万円の場合、17万円になります。
また、民事裁判をする場合、訴状作成等の手間がかかります。ただ、この手間は、弁護士が基本的に負担します。
ウ 早めにお金が必要なので、解決までに時間がかかる民事裁判をする余裕がないと思われる方へ
但し、民事裁判をする前に、加害者側の自賠責保険会社に対して被害者請求をすれば、死亡事案では、死亡損害について、本請求の場合、上限3000万円、仮渡金請求の場合、290万円が、自賠責保険金として支払われます。
そして、その自賠責保険金では足りない分を、民事裁判で求める方法があります。
このように、被害者遺族は、民事裁判をする前に、加害者側の自賠責保険会社に対して被害者請求をすることにより、いわば軍資金を確保する方法があります。
(6)交通事故の死亡事案で民事裁判をするかの選択
ア 交通事故の死亡事案で民事裁判をするのが適している事案
(ア)
例えば、被害者遺族の被害感情が非常に強く、民事では、できる限りの損害賠償金を獲得したい、刑事では、加害者にできる限りの厳罰が下されるようにしたいというご意向の場合があります。
被害者遺族が、お子様を亡くされたご両親の場合に多いです。
(イ)
このような場合、上記のように、民事裁判の方が、できる限りの損害賠償金を獲得可能です。
また、被害者が若年者の場合、死亡による逸失利益や死亡慰謝料が高額になりやすく、損害の合計額が高額になりやすく、民事裁判をした場合に獲得できる、弁護士費用と遅延損害金も高額になりやすいです。
また、上記のように、被害者遺族の被害感情が非常に強いので、互譲(お互いが譲歩)による示談での解決より、民事裁判における判決での解決の方が適していると言えます。
よって、このような場合、民事裁判をするのが適していると言えます。
(ウ)
また、このような場合、事故後早い段階で、弁護士に依頼するのが適していると言えます。
早い段階の方が、弁護士が、刑事にも対応できるからです。
イ 交通事故の死亡事案で、民事裁判ではなく、示談交渉をするのが適している事案
例えば、被害者が、平均余命に近い高齢者の場合を考えます。
この場合、若年者と比べて、死亡による逸失利益や死亡慰謝料が低額になりやすく、損害の合計額が低額になりやすく、民事裁判をした場合に獲得できる、弁護士費用と遅延損害金も低額になりやすいです。
わざわざ民事裁判をするほどではないとして、示談交渉をすることが多いと言えます。
ウ 当事務所の対応
民事裁判をするかの選択につきましては、当事務所では、上記のようなメリット・デメリット等を、ご依頼者(被害者遺族)にご説明します。
そして、当該事案における、当事務所のお勧めの選択をご説明します。
そして、その上で、最終的には、ご依頼者(被害者遺族)のご意向に従って、選択しております。
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(7)交通事故の死亡事案の民事裁判の流れ
交通事故の死亡事案の民事裁判の流れを、以下、説明いたします。
ア 原告による訴訟提起(訴状等の提出)
被害者遺族の弁護士が、訴訟提起の準備として、訴状を作成し、また、証拠を収集し、そして、裁判所に訴状等を提出、すなわち、訴訟提起した場合、民事裁判が行われることになります。
イ 裁判所による訴状審査、第1回期日の指定
裁判所は、提出された訴状の内容を審査し、そして、原告代理人弁護士の都合を聞いたうえ、第1回期日を指定します。
そして、裁判所は、被告に、訴状等を送達します。
ウ 民事裁判の第1回期日
被告は、原告の訴状に対する答弁を記載した答弁書を提出します。
また、第1回期日は、被告側の都合を聞かずに、指定されるため、被告側は、答弁書を提出すれば、第1回期日に欠席することが認められています。
エ 民事裁判の第2回期日以降
例えば、原告の訴状に対して、被告が、第2回期日までに、反論を記載した準備書面を提出します。
これに対して、原告が、第3回期日までに、反論を記載した準備書面を提出します。
このように、原告被告双方が、主張反論を記載した準備書面を提出し合うことにより、民事裁判は進みます。
概ね、1か月半に1度くらいのペースで、期日が指定されます。
オ 裁判所による和解案の提案 → 和解成立か和解協議決裂
裁判所は、原告被告双方の主張反論がし尽くしたとき、和解案を提案するのが通常です。
そして、原告被告双方が、裁判所の和解案に同意した場合、裁判上の和解が成立し、民事裁判は終了します。
カ 尋問手続き
和解協議が決裂したとき、一般的には、尋問手続きが行われます。
但し、交通事故の死亡事案の場合、大きな争いがなければ、尋問手続きが行われない(行う必要がないと判断される)ことが多いです。
この点、大きな争いがない場合とは、例えば、死亡慰謝料で、被害者側の主張が2800万円、加害者側(任意保険会社)の主張が2500万円であるような場合や、過失割合で、被害者側の主張が加害者:被害者=90:10、加害者側(任意保険会社)の主張が80:20であるような場合です。
キ 判決
裁判所は、判決を下します。
原告被告双方は、判決書が送達されてから(判決書を受領してから)2週間以内に、高等裁判所に控訴(判決に対する不服申立て)するかを決める必要があります。
そして、原告被告双方が、控訴しない場合、判決が確定し、民事裁判は終了します。
交通事故の死亡事案の場合、大きな争いがなければ、原告被告双方が控訴せずに、民事裁判が終了することが多いです。控訴しても、高等裁判所で判断が変わることは、統計上、少ない状況だからです。
(8)交通事故の死亡事案の民事裁判のQ&A(1)
ア 交通事故の死亡事案の民事裁判のQ&A(1)
イ 交通事故の死亡事案の民事裁判~原告は誰がなるか?
ウ 交通事故の死亡事案の民事裁判~被告は誰にするか?
エ 交通事故の死亡事案の民事裁判~どこの裁判所で行われるか?
オ 交通事故の死亡事案の民事裁判~どのように解決するか?
以下、順に、回答いたします。
イ 交通事故の死亡事案の民事裁判~原告は誰がなるか?
(ア)被害者の相続人
交通事故の被害者は、加害者側に対して、損害賠償請求をすることができます。
但し、交通事故の死亡事案の場合、被害者は死亡しています。
そして、被害者が死亡した場合、被害者の損害賠償請求権は、相続人が相続します。
よって、原告は、被害者の相続人がなります。
(イ)被害者の「父母、配偶者及び子」
また、交通事故の死亡事案の場合、被害者の「父母、配偶者及び子」は、法律(民法711条)上、固有の死亡慰謝料請求をすることができるとされています。
よって、原告は、被害者の「父母、配偶者及び子」がなります。
ウ 交通事故の死亡事案の民事裁判~被告は誰にするか?
(ア)加害者本人
民法709条は、不法行為に基づく損害賠償責任を規定しています。
加害者本人(加害自動車の運転者)は、この一般不法行為責任を負います。
よって、被告は、加害者本人にします。
(イ)加害自動車の所有者
自動車損害賠償保障法(自賠法)3条は、交通事故の人身事故の場合、運行供用者(「自己のために自動車を運行の用に供する者」)の損害賠償責任を規定しています。
加害自動車の所有者は、この運行供用者責任を負います。
よって、被告は、加害自動車の所有者にします。
エ 交通事故の死亡事案の民事裁判~どこの裁判所で行われるか?
(ア)被告の住所地、原告の住所地、交通事故地を管轄する裁判所
交通事故の損害賠償請求事件では、民事裁判は、基本的に、被告の住所地(民事訴訟法4条)、原告の住所地(民事訴訟法5条1号)、交通事故地(民事訴訟法5条9号)を管轄する裁判所で行われます。
原告は、いずれの地の裁判所に提起するかを、選択することができます。
(イ)合意管轄等
但し、原告と被告が合意すれば、どこの裁判所でも行うことができます(民事訴訟法11条)。これを、合意管轄といいます。
また、訴訟がその管轄に属した場合でも、早い段階であれば、原告と被告が合意すれば、他の裁判所に移送することができます(民事訴訟法19条1項)。
オ 交通事故の死亡事案の民事裁判~どのように解決するか?
(ア)裁判上の和解
民事裁判では、裁判所は、原告被告双方の主張反論がし尽くしたとき、和解案を提案するのが通常です。
そして、原告被告双方が、裁判所の和解案に同意した場合、裁判上の和解が成立し、民事裁判は終了します。
民事裁判は、統計上、7~8割が、裁判上の和解で終了している状況です。
(イ)判決
和解協議が決裂したとき、裁判所は、判決を下します。
そして、原告被告双方が、上訴(判決に対する不服申立て)しない場合、判決が確定し、民事裁判は終了します。
(9)交通事故の死亡事案の民事裁判のQ&A(2)
ア 交通事故の死亡事案の民事裁判のQ&A(2)
イ 交通事故の死亡事案の民事裁判~当事者は裁判所に出頭しなければならないか?
ウ 交通事故の死亡事案の民事裁判~解決までにどれ位時間がかかるか?
エ 交通事故の死亡事案の民事裁判~勝つために大事なことは何か?
オ 交通事故の死亡事案の民事裁判~手間が多くかかるか?
以下、順に、回答いたします。
イ 交通事故の死亡事案の民事裁判~当事者は裁判所に出頭しなければならないか?
(ア)
民事裁判は、通常、代理人の弁護士だけが、裁判所に出頭します。
当事者(原告となる、被害者の相続人、被害者の「父母、配偶者及び子」)は、裁判所に出頭する必要はありません。ただ、出頭することはもちろんできます。
(イ)
また、現在の実務では、コロナ以降、ウェブ会議や電話会議の方法で、民事裁判が行われている状況です。
弁護士が裁判所に出頭せずに、事務所にいながら、ウェブや電話で、民事裁判を進めることができる状況です。
ウ 交通事故の死亡事案の民事裁判~解決までにどれ位時間がかかるか?
(ア)
民事裁判は、訴訟提起の準備に2か月程度、訴訟提起後、大きな争いがなければ、6か月~1年程度で解決することがあります。
この点、大きな争いがない場合とは、例えば、死亡慰謝料で、被害者側の主張が2800万円、加害者側(任意保険会社)の主張が2500万円であるような場合や、過失割合で、被害者側の主張が加害者:被害者=90:10、加害者側(任意保険会社)の主張が80:20であるような場合です。
(イ)
他方、大きな争いがある場合とは、例えば、加害自動車の運転者が、交差点を青信号で進行したか、赤信号で進行したかで争いがあるような場合で、過失割合が大きく違ってくるような場合です。
大きな争いがある場合は、高等裁判所まで争うことが多く、解決までに時間がかかるのは仕方がないところがあります。
エ 交通事故の死亡事案の民事裁判~勝つために大事なことは何か?
民事裁判で主張したいことは、基本的に、書面に記載して提出する必要があります。
よって、訴状や準備書面(主張反論を記載した書面)をしっかり作成することが大事になります。
また、証拠をしっかり提出することが大事になります。
オ 交通事故の死亡事案の民事裁判~手間が多くかかるか?
民事裁判では、訴状や準備書面(主張反論を記載した書面)を作成する必要があります。
ただ、この手間は、弁護士が基本的に負担します。
2 交通事故の死亡事案の刑事裁判について
(1)交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)の流れ
交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)の流れを、以下、説明いたします。
ア 交通死亡事故
加害者が交通死亡事故を起こした場合、捜査機関(警察、検察)による捜査が行われることになります。
イ 逮捕 → 在宅
交通死亡事故を起こした加害者は、過失運転致死罪等の容疑で、逮捕されることが多いです。
ただ、交通死亡事故の場合、被疑者は早期に身柄を解放されることが多く、その後は、在宅で捜査されることが多いです。
ウ 警察の捜査
警察の捜査は、具体的には、
- 被疑者、目撃者、被害者遺族から事情聴取して、供述調書を作成する
- 事故現場や事故車両の実況見分をして、実況見分調書や写真撮影報告書を作成する
- 事故車両のドライブレコーダーや、事故現場周辺の防犯カメラを捜査して、捜査報告書を作成する
- 事故車両の速度を鑑定して、捜査報告書や鑑定書を作成する
などです。
エ 検察官の捜査
警察は、捜査を終了したら、検察庁に捜査書類を送致します。
検察官の捜査は、具体的には、
- 被疑者、目撃者から事情聴取して、供述調書を作成する
- 警察に補充捜査を要請する
などです。
オ 検察官による処分
検察官は、捜査を終了したら、被疑者に対して処分を下します。
検察官による処分には、
- 起訴処分としての、公判請求(裁判所に対して公開の法廷での審理を求める起訴)
- 起訴処分としての、略式請求(簡易裁判所に対して罰金刑を言い渡す手続きを求める起訴)
- 不起訴処分(嫌疑不十分等の理由)
があります。
公判請求だと、刑事裁判が行われることになります。
略式請求だと、罰金刑が言い渡されることになります。
(2)交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)のQ&A
ア 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)のQ&A
イ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~加害者には、何罪が適用されるか?
ウ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~過失運転致死罪の場合、検察官による処分は、公判請求と略式請求のどちらが多いか?
エ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~加害者に厳罰が下される(公判請求になる)には、どうすればよいか?
オ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~被害者遺族は、民事裁判や示談交渉に利用するために、捜査機関(警察、検察)の捜査記録(実況見分調書、捜査報告書、供述調書など)を取得できるか?
以下、順に、回答いたします。
イ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~加害者には、何罪が適用されるか?
(ア)
交通死亡事故を起こした加害者には、過失運転致死罪か危険運転致死罪が適用されます。
そして、統計上、過失運転致死罪が適用されることが圧倒的に多い状況です。
(イ)
過失運転致死罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死亡させた者」に適用されます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)5条)。
過失運転致死罪の法定刑は、「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」になります(自動車運転処罰法5条)。
(ウ)
危険運転致死罪は、例えば、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為を行い、よって、人を死亡させた者」に適用されます(自動車運転処罰法2条)。
このように、危険運転致死罪が適用される範囲は、非常に限定されています。
危険運転致死罪の法定刑は、「一年以上二十年以下の有期懲役」になります(自動車運転処罰法2条、刑法12条)。
ウ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~過失運転致死罪の場合、検察官による処分は、公判請求と略式請求のどちらが多いか?
(ア)
上記のように、検察官による処分には、
- 起訴処分としての、公判請求(裁判所に対して公開の法廷での審理を求める起訴)
- 起訴処分としての、略式請求(簡易裁判所に対して罰金刑を言い渡す手続きを求める起訴)
- 不起訴処分(嫌疑不十分等の理由)
があります。
公判請求だと、刑事裁判が行われることになります。
略式請求だと、罰金刑が言い渡されることになります。
(イ)
そして、現在の実務では、過失運転致死罪の場合(交通事故の死亡事案の場合)であっても、公判請求と略式請求については、略式請求されることが多い状況です。
エ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~加害者に厳罰が下される(公判請求になる)には、どうすればよいか?
(ア)
当事務所は、交通事故の死亡事案の被害者遺族の民事の損害賠償請求(保険金請求)を、専門的に取り扱っております。
そして、当事務所は、ご依頼者からのご希望があれば、加害者の刑事手続きについても、加害者に厳罰が下されることを追及する活動を行うなど、被害者遺族のサポートを、積極的に行っております。
(イ)
そして、加害者に厳罰が下される(公判請求になる)には、まず、被害者遺族が、警察からの事情聴取の際に、加害者に厳罰が下されることを強く希望する旨を供述し、供述調書にその旨が記載されることが大事になります。
(ウ)
また、検察官が処分を下すことから、検察官に働きかけることが大事になります。
当事務所は、検察官に、略式請求ではなく、公判請求をするように要請する書面を送ったり、検察官に電話をして、要請したり、議論したりして、加害者に厳罰が下される(公判請求になる)ことを追及する活動を行っております。
オ 交通事故の死亡事案の事故から刑事裁判まで(捜査段階)~被害者遺族は、民事裁判や示談交渉に利用するために、捜査機関(警察、検察)の捜査記録(実況見分調書、捜査報告書、供述調書など)を取得できるか?
(ア)事故から、検察官による処分まで(捜査段階)
この段階では、被害者遺族は、捜査記録を取得(正確には、閲覧・謄写)できません。
(イ)検察官による処分後
a 刑事裁判係属中
- (a)被害者遺族が、被害者参加している場合
- 被害者遺族は、被害者参加人として、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
検察官が被告人の犯罪事実を立証するための証拠として裁判所に提出した記録(実況見分証書、捜査報告書、供述調書など)等を取得できます。 - (b)被害者遺族が、被害者参加していない場合
- 被害者遺族は、犯罪被害者保護法3条に基づき、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
裁判所に申請して、取得できます。
検察官が被告人の犯罪事実を立証するための証拠として裁判所に提出した記録(実況見分証書、捜査報告書、供述調書など)等を取得できます。
b 刑事裁判確定後
被害者遺族は、刑事訴訟法53条に基づき、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
検察庁に申請して、取得できます。
検察官が被告人の犯罪事実を立証するための証拠として裁判所に提出した記録(実況見分証書、捜査報告書、供述調書など)を取得できます。
c 罰金刑確定後
bと同じです。
d 不起訴処分後
被害者遺族は、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
検察庁に申請して、取得できます。
但し、不起訴記録の場合、客観的証拠が開示され、実況見分調書や写真撮影報告書などは開示されますが、供述調書は開示されません。
(3)交通事故の死亡事案の刑事裁判の流れ
交通事故の死亡事案の刑事裁判の流れを、以下、説明いたします。
被告人が自白している場合を前提とした流れを、説明いたします。
ア 検察官の公判請求
検察官が公判請求(裁判所に対して公開の法廷での審理を求める起訴)をした場合、刑事裁判が行われることになります。
イ 刑事裁判の第1回期日
(ア)冒頭手続き
a 裁判官の被告人に対する人定質問
裁判官は、被告人に、氏名、住所等を確認します。
b 検察官の起訴状の朗読
検察官は、起訴状に記載されている、被告人の「公訴事実」(犯罪事実)と「罪名及び罰条」を朗読します。
c 裁判官の被告人に対する黙秘権等の告知
裁判官は、被告人に、黙秘権等があることを告知します。
d 被告人の罪状認否
自白事件の場合、被告人は、起訴状記載の「公訴事実」(犯罪事実)について、間違いないと認めます。
e 弁護人の罪状認否
自白事件の場合、弁護人も、被告人と同意見であると認めます。
(イ)証拠調べ手続き
a 検察官の冒頭陳述、証拠調べ請求、証拠調べ
- (a)検察官の冒頭陳述
- 検察官は、被告人の身上・経歴等、犯行に至る経緯や犯行状況等を陳述します。
- (b)検察官の証拠調べ請求
- 検察官は、起訴状記載の「公訴事実」(犯罪事実)を立証するための証拠(実況見分調書、捜査報告書、供述調書など)の取調べを請求します。
- (c)弁護人の上記証拠調べ請求に対する意見
- 自白事件の場合、弁護人は、通常、上記証拠の取調べに同意します。
- (d)証拠調べ
- 裁判官は、証拠(実況見分調書、捜査報告書、供述調書など)を取調べます。
b 弁護人の証拠調べ請求、証拠調べ、証人尋問
- (a)弁護人の証拠調べ請求
- 自白事件の場合で、過失運転致死罪の場合(交通事故の死亡事案の場合)、弁護人は、通常、
被告人が加入している任意保険の保険証券の取調べ
情状証人(被告人の配偶者、親など)の尋問
などを請求します。 - (b)検察官の上記証拠調べ請求に対する意見
- 自白事件の場合、検察官は、通常、上記証拠の取調べに同意します。
- (c)証拠調べ
- 裁判官は、証拠(被告人が加入している任意保険の保険証券など)を取調べます。
- (d)証人尋問
- 裁判官の証人に対する人定尋問
裁判官は、証人に、氏名、住所等を確認します。 - 証人の宣誓
証人は、「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。」という宣誓をします。 - 裁判官の証人に対する偽証罪等の告知
裁判官は、証人に、記憶に反する陳述をした場合、偽証罪になること等を告知します。 - 弁護人の主尋問
まず、証人にとって味方側である弁護人から、証人に、尋問します。 - 検察官の反対尋問
次に、検察官は、証人に、尋問します。 - 裁判官の補充尋問
最後に、裁判官は、証人に、尋問します。
- 裁判官の証人に対する人定尋問
c 被告人質問
- (a)弁護人の質問
- まず、被告人にとって味方側である弁護人から、被告人に、質問します。
- (b)検察官の反対質問
- 次に、検察官は、被告人に、質問します。
- (c)裁判官の補充質問
- 最後に、裁判官は、被告人に、質問します。
(ウ)論告・求刑、弁論、最終陳述
a 検察官の論告・求刑
検察官は、最終意見として、被告人に不利な情状を列挙して主張して、求刑します。
b 弁護人の弁論
弁護人は、最終意見として、被告人に有利な情状を列挙して主張して、寛大な判決を求めます。
c 被告人の最終陳述
被告人は、最後に述べておきたいことを陳述します。
ウ 刑事裁判の第2回期日
裁判所は、判決を下します。
判決には、
- 有罪判決としての、実刑判決(刑務所に入らなければならない判決)
- 有罪判決としての、執行猶予判決(刑務所に入らなくてもよい判決)
- 無罪判決
があります。
自白事件の場合、有罪判決が下されます。
(4)交通事故の死亡事案の刑事裁判~被害者参加制度
ア 被害者参加制度
被害者参加制度とは、犯罪被害者が、刑事裁判に参加する制度のことをいいます。
平成20年以前は、犯罪被害者は、刑事裁判に直接参加することはできず、傍聴することしかできませんでした。
しかし、犯罪被害者の支援の観点から、平成20年から、犯罪被害者が、刑事裁判で、刑事被告人に直接質問をすること等ができるようになりました。
イ 被害者参加制度の対象
(ア)被害者参加制度の対象となる犯罪
被害者参加制度の対象となる犯罪については、交通事故の加害者が人を死傷させた場合に適用される、危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪は、いずれも該当します。
よって、交通事故の死亡事案の被害者遺族は、参加できることは問題ありません。
(イ)被害者参加制度の対象者
被害者参加制度の対象者は、被害者が死亡した場合、その配偶者、直系親族(子、親など)、兄弟姉妹とされています。
ウ 参加申出の手続き
手続きとしては、被害者遺族は、被疑者が起訴された後、検察官に対して、参加の申出をします。
そして、裁判所から許可された場合、被害者遺族は、刑事裁判に被害者参加人として参加することができます。
エ 被害者参加人の権利
被害者参加人には、以下のことが認められています。
(ア)公判期日に出席すること
被害者参加人は、公判期日に出席することができます。
また、被害者参加人は、法廷の中に入り、検察官の横に座ることができます。
(イ)検察官に意見を述べ、説明を受けること
被害者参加人は、検察官に、意見を述べることができます。
また、検察官が、被害者参加人の意見に従わない場合、被害者参加人に、その理由を説明しなければなりません。
(ウ)証人に尋問をすること
被害者参加人は、証人に、尋問をすることができます。
但し、尋問できるのは、情状に関する事項に限られており、犯罪事実に関する事項は認められていません。
(エ)被告人に質問をすること
被害者参加人は、被告人に、質問をすることができます。
(オ)事実関係や法律の適用について意見を陳述すること
被害者参加人は、裁判官に、事実関係や法律の適用について意見を陳述することができます。
被害者参加人は、平成12年から、心情等に関する意見を陳述することができていましたが、さらに進んで、論告・求刑の意見を陳述することができるようになりました。
論告・求刑は、刑事裁判の最終段階での意見陳述で、最も重要な意見陳述の一つですが、被害者参加人は、これをすることができるようになりました。
オ 弁護士への委託
被害者参加人は、弁護士に、上記の各行為を委託することができます。
委託を受けた弁護士は、被害者参加弁護士として、刑事裁判に参加して、被害者参加人のために活動します。
(5)交通事故の死亡事案の刑事裁判の流れ~被害者参加の場合
ア 被害者参加の場合
被害者参加の場合の一つのケースとしての流れを、以下、説明いたします。
イ 刑事裁判の第1回期日
(ア)冒頭手続き
「被害者参加の場合」でない場合と同じです。
(イ)証拠調べ手続き
a 検察官の冒頭陳述、証拠調べ請求、証拠調べ
「被害者参加の場合」でない場合と同じです。
b 弁護人の証拠調べ請求、証拠調べ、証人尋問
「被害者参加の場合」でない場合と同じです。
c 被告人質問
- (a)弁護人の質問
- まず、被告人にとって味方側である弁護人から、被告人に、質問します。
- (b)検察官の反対質問
- 次に、検察官は、被告人に、質問します。
- (c)被害者参加弁護士の反対質問
- 次に、被害者参加弁護士は、被告人に、質問します。
- (d)裁判官の補充質問
- 最後に、裁判官は、被告人に、質問します。
ウ 刑事裁判の第2回期日
(ア)被害者参加人の心情等に関する意見陳述
被害者参加人は、心情等に関する意見を陳述します。
(イ)検察官の論告・求刑
検察官は、最終意見として、被告人に不利な情状を列挙して主張して、求刑します。
(ウ)被害者参加弁護士の論告・求刑
被害者参加弁護士は、最終意見として、被告人に不利な情状を列挙して主張して、求刑します。
(エ)弁護人の弁論
弁護人は、最終意見として、被告人に有利な情状を列挙して主張して、寛大な判決を求めます。
(オ)被告人の最終陳述
被告人は、最後に述べておきたいことを陳述します。
エ 刑事裁判の第3回期日
裁判所は、判決を下します。
(6)交通事故の死亡事案の刑事裁判のQ&A
ア 交通事故の死亡事案の刑事裁判のQ&A
イ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~加害者は、何罪で公判請求(起訴)されることが多いか?
ウ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~過失運転致死罪の場合、判決は、実刑判決と執行猶予判決のどちらが多いか?
エ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~加害者に厳罰が下される(実刑判決になる)には、どうすればよいか?
オ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~被害者遺族は、民事裁判や示談交渉に利用するために、刑事裁判の記録(実況見分調書、捜査報告書、供述調書など)を取得できるか?
以下、順に、回答いたします。
イ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~加害者は、何罪で公判請求(起訴)されることが多いか?
(ア)
交通死亡事故を起こした加害者には、過失運転致死罪か危険運転致死罪が適用されます。
そして、統計上、過失運転致死罪が適用されることが圧倒的に多い状況です。
(イ)
過失運転致死罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死亡させた者」に適用されます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)5条)。
過失運転致死罪の法定刑は、「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」になります(自動車運転処罰法5条)。
(ウ)
危険運転致死罪は、例えば、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為を行い、よって、人を死亡させた者」に適用されます(自動車運転処罰法2条)。
このように、危険運転致死罪が適用される範囲は、非常に限定されています。
危険運転致死罪の法定刑は、「一年以上二十年以下の有期懲役」になります(自動車運転処罰法2条、刑法12条)。
検察官が危険運転致死罪で公判請求(起訴)した場合、刑事裁判は、裁判員裁判で行われることになります。
ウ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~過失運転致死罪の場合、判決は、実刑判決と執行猶予判決のどちらが多いか?
(ア)
上記のように、判決には、
- 有罪判決としての、実刑判決(刑務所に入らなければならない判決)
- 有罪判決としての、執行猶予判決(刑務所に入らなくてもよい判決)
- 無罪判決
があります。
自白事件の場合、有罪判決が下されます。
(イ)
そして、現在の実務では、過失運転致死罪の場合、実刑判決と執行猶予判決については、執行猶予判決が下されることが圧倒的に多い状況です。
エ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~加害者に厳罰が下される(実刑判決になる)には、どうすればよいか?
(ア)
当事務所は、交通事故の死亡事案の被害者遺族の民事の損害賠償請求(保険金請求)を、専門的に取り扱っております。
そして、当事務所は、ご依頼者からのご希望があれば、加害者の刑事手続きについても、加害者に厳罰が下されることを追及する活動を行うなど、被害者遺族のサポートを、積極的に行っております。
(イ)
そして、加害者に厳罰が下されるには、被害者参加制度を利用して、被害者遺族は、被害者参加人になり、被害者遺族の弁護士は、被害者参加弁護士になり、刑事裁判に参加することが大事になります。
そして、以下のことをすることが大事になります。
- 被害者遺族は、被害者参加人として、公判期日に出席し、法廷の中に入り、検察官の横に座る
- 被害者遺族は、被害者参加人として、心情等に関する意見を陳述する
- 被害者遺族の弁護士は、被害者参加弁護士として、公判期日に出席し、法廷の中に入り、検察官の横に座る
- 被害者遺族の弁護士は、被害者参加弁護士として、被告人に質問をする
- 被害者遺族の弁護士は、被害者参加弁護士として、事実関係や法律の適用について意見(論告・求刑の意見)を陳述する
(ウ)
ただ、上記のように、現在の実務では、過失運転致死罪の場合、実刑判決と執行猶予判決については、執行猶予判決が下されることが圧倒的に多い状況です。
よって、実刑判決が下されることは、非常に難しい状況です。
ただ、執行猶予判決でも、例えば、「禁錮1年6月、執行猶予3年の判決」や、「禁錮3年、執行猶予5年の判決」があります。
そして、後者の判決の方が、重い判決になります。
また、後者の判決は、執行猶予判決の中で、最も重い判決になります。これ以上重い判決は、実刑判決になります。
よって、後者の判決を目指すのがよろしいと思います。
(エ)
なお、当事務所の代表弁護士は、おそらく日本で一番多く、ご依頼者から委託を受けて、被害者参加弁護士になったことがある弁護士だと思います。
代表弁護士は、それくらい、刑事手続きについても、被害者遺族を積極的にサポートしてきました。
オ 交通事故の死亡事案の刑事裁判~被害者遺族は、民事裁判や示談交渉に利用するために、刑事裁判の記録(実況見分調書、捜査報告書、供述調書など)を取得できるか?
(ア)刑事裁判係属中
a 被害者遺族が、被害者参加している場合
被害者遺族は、被害者参加人として、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
検察官が被告人の犯罪事実を立証するための証拠として裁判所に提出した記録(実況見分証書、捜査報告書、供述調書など)等を取得できます。
b 被害者遺族が、被害者参加していない場合
被害者遺族は、犯罪被害者保護法3条に基づき、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
裁判所に申請して、取得できます。
検察官が被告人の犯罪事実を立証するための証拠として裁判所に提出した記録(実況見分証書、捜査報告書、供述調書など)等を取得できます。
(イ)刑事裁判確定後
被害者遺族は、刑事訴訟法53条に基づき、取得(正確には、閲覧・謄写)できます。
検察庁に申請して、取得できます。
検察官が被告人の犯罪事実を立証するための証拠として裁判所に提出した記録(実況見分証書、捜査報告書、供述調書など)を取得できます。