過失相殺の問題点

1 はじめに~交通事故の死亡事案

当法律(弁護士)事務所は、交通事故の死亡事案の被害者遺族の損害賠償請求(保険金請求)を、専門的に取り扱っております。

そして、交通事故の死亡事案の損害賠償請求(保険金請求)において、損害額に大きく関わる問題として、「過失相殺」の問題があります。

2 過失相殺

過失相殺(かしつそうさい)は、被害者にも過失(落ち度)があった場合、被害者に生じた損害全額を加害者に負担させるのは、公平の観点から妥当ではないので、その過失割合に応じて、加害者に負担させる損害額を減額すべきであるとの考えに基づくものです。

過失相殺全般については、「過失相殺」をご覧ください。

3 過失相殺の問題点

(1)過失相殺能力の問題

ア 問題点

例えば、被害者が幼稚園児で、道に飛び出して、交通事故に遭った場合、その幼稚園児は、物事を判断する能力が欠けていることから、過失相殺をするのは、幼稚園児に酷であり、過失相殺をすべきではないとも考えられます。

そこで、過失相殺をするにあたり、被害者にどの程度の能力が必要であると考えるべきかが問題となります。

イ 判例

この点、判例は、交通事故被害者に事理弁識能力があれば足りると解釈しています。

そして、事理弁識能力は、一般に、小学校低学年程度以上の年齢で備わっていると考えられますので、上記の例では、交通事故被害者である幼稚園児の過失(落ち度)は考慮されないことになります。

(2)被害者側の過失の問題

ア 問題点

しかし、上記の例で、例えば、親が他人との話に夢中になっていたため、幼稚園児の監視を怠り、幼稚園児が、道に飛び出して、交通事故に遭った場合を考えます。

この場合、上記のように、交通事故被害者である幼稚園児の過失(落ち度)は考慮されません。

しかし、親には過失(落ち度)があると考えられることから、過失相殺をするにあたり、被害者側の過失を考慮すべきかが問題となります。

イ 判例

この点、判例は、過失相殺制度の目的である、損害の公平な分担を図る観点から、被害者と身分上、生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失を考慮するとしています。

よって、上記の例では、幼稚園児とその親は、このような関係にありますので、幼稚園児の加害者側に対する損害賠償請求について、親の過失(落ち度)は考慮されて、結局、過失相殺されることになります。

(3)素因減額の問題

ア 問題点

例えば、

(1)被害者が、交通事故後、うつ病を患い、損害額が拡大した場合(心因的要因)や、

(2)被害者が、交通事故時、病気を患っていたり、平均人の体格や体質と異なる身体的特徴を有していたため、損害額が拡大した場合(体質的・身体的素因)を考えます。

このような場合、被害者に過失(落ち度)があるわけではないですが、過失相殺的観点から、加害者に負担させる損害額を減額すべきかが問題となります。

イ 心因的要因〜最高裁判例の傾向

この点、最高裁判例の傾向は、過失相殺制度の目的である、損害の公平な分担を図る観点から、交通事故被害者の性格等の心因的要因が、損害額の拡大に寄与した場合、基本的に、減額を認めています(最高裁昭和63年4月21日判決、最高裁平成5年9月9日判決)。

但し、交通事故被害者の性格等の心因的要因が、「個性の多様さとして通常想定される範囲」内であれば,減額を認めていません(最高裁平成12年3月24日判決(電通過労自殺事件判決))。

ウ 体質的・身体的素因〜最高裁判例の傾向

(ア)疾患(病気)(既往症)
この点、最高裁判例の傾向は、過失相殺制度の目的である、損害の公平な分担を図る観点から、交通事故被害者の疾患(病気)(既往症)が、損害額の拡大に寄与した場合、基本的に、減額を認めています(最高裁平成4年6月25日判決、最高裁平成8年10月29日判決)。
(イ)平均人の体格や体質と異なる身体的特徴
他方、最高裁判例は、交通事故被害者が、平均人の体格や体質と異なる身体的特徴を有していたことが、損害額の拡大に寄与した場合、原則として(その身体的特徴が、「個々人の個体差の範囲」内であれば)、減額を認めていません(最高裁平成8年10月29日判決(首長事件判決・あるがまま事件判決)。

(4)無償(好意)同乗の問題

ア 問題点

例えば、自動車の運転者が、交通事故を起こし、同乗中の友人が負傷した場合を考えます。そして、友人は、運転者の好意で無償で同乗していた場合を考えます。

このような場合、被害者に過失(落ち度)があるわけではないですが、過失相殺的観点から、加害者に負担させる損害額を減額すべきかが問題となります。

イ 判例の傾向

この点、判例の傾向は、無償(好意)同乗自体を理由として、減額を認めていません。

但し、同乗者に帰責事由(危険承知、危険関与・増幅など)がある場合、減額を認めています。

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