相続人であることの証明・戸籍謄本等(死亡事故)
1 相続人であることの証明
交通事故の死亡事案の損害賠償請求事件の場合、損害賠償請求手続きを進めるにあたっては、相続人は、相続人であることを証明する必要があります。
そして、これは、被害者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取得して証明することになります。
以下、まず、戸籍謄本等について説明し、次に、どの範囲の戸籍謄本等を取得する必要があるか、ケース別に説明いたします。
2 戸籍制度
戸籍(こせき)制度は、国民の出生関係を登録する制度です。
戸籍は、原則として、一夫婦とこれと氏を同じくする子ごとに編製されています。
戸籍には、国民の出生から死亡までの履歴が記録されますので、相続の手続きの際は、取るべき手順が明確であるといえます。
3 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
(1)戸籍謄本
戸籍謄本(こせきとうほん)は、戸籍の記載事項の全部を転写したものです。
なお、一部を転写したものは、戸籍抄本(こせきしょうほん)になります。
また、電算化(コンピュータ化)された戸籍謄本を、戸籍全部事項証明書、電算化(コンピュータ化)された戸籍抄本を、戸籍個人事項証明書といいます。(2)除籍謄本
除籍謄本(じょせきとうほん)は、除籍された戸籍の記載事項の全部を転写したものです。
戸籍が除籍される場合は、戸籍に記載されている者の全てが、死亡、婚姻等により戸籍から除かれるか、本籍を他に移した場合になります。
(3)改製原戸籍謄本
改製原戸籍謄本(かいせいはらこせきとうほん)は、改製原戸籍の記載事項の全部を転写したものです。
改製原戸籍は、法令による戸籍の改製が行われた場合の、改製前の古い様式の戸籍になります。
4 ケース1 相続人が配偶者と子の場合
例えば、被害者Aが交通事故により死亡し、相続人が、妻のB、子のCの場合を考えます。
この場合、BとCは、自らが相続人であることを証明するためには、(1)Bは、Aの妻であること、(2)Cは、Aの子であること、(3)Cの他に、Aには、子がいないことを証明する必要があります。
そのためには、Aの出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取得すれば、証明することができます。
5 ケース2 相続人が父母の場合
例えば、被害者Aが交通事故により死亡し、相続人が、父のB、母のCの場合を考えます。
この場合、BとCは、自らが相続人であることを証明するためには、(1)BとCは、Aの父母であること、(2)Aには、配偶者がいないこと、(3)Aには、子がいないことを証明する必要があります。
そのためには、Aの出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取得すれば、証明することができます。
6 ケース3 相続人が兄弟姉妹の場合
例えば、被害者Aが交通事故により死亡し、相続人が、兄のBの場合を考えます。
この場合、Bは、自らが相続人であることを証明するためには、(1)Bは、Aの兄であること、(2)Aには、配偶者がいないこと、(3)Aには、子がいないこと、(4)Aの父母は、既に死亡していること、(5)Aの祖父母は、既に死亡していること、(6)Bの他に、Aには、兄弟姉妹がいないことを証明する必要があります。
(1)〜(3)は、Aの出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取得すれば、証明することができます。
(4)と(5)は、その旨の記載がある戸籍謄本等を取得すれば、証明することができます。
(6)は、父の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等と、母の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取得すれば、証明することができます。
なお、戸籍謄本等で重なるものは、重ねて取得する必要はありません。